こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。
ということで、今回はゼロからわかる基礎知識、ヨーロッパの建築様式を紹介していきますね。
ヨーロッパの建築様式
ヨーロッパ旅行をしたことのある人なら、きっと一度はヨーロッパの教会を訪れたことがあるんじゃないかしら。
そして、ガイドブックなんかに、「この教会はゴシック建築…」、「ルネッサンス建築と代表する教会…」といったような文章を目にしたことがあるんじゃない。
ガイドブックを読むと、「ああ、なるほどこれがロマネスク建築…」となんとなく分かったような、分からないような、曖昧なままになってしまうことも多いかと思うわ。
分からなくてもわからないなりに感動はするし、長い歴史を肌で感じることもできるわ。
そして、それは一つの旅の楽しみ方でもあると思うの。
ただこれだははっきり言えるわ…
ほんの少しだけヨーロッパ建築について知るだけで、教会や古い建物の見かたがガラッと変わるし、観光が何十倍も楽しくなることは間違いないわね。
ヨーロッパ建築様式の区分
建築様式というのは、その建築の特徴と考えれば大丈夫よ。
ヨーロッパ建築は、大きく分けて8つの建築様式に分類することができるの。
(本当はもっと細分化されるんだけど、わかりやすく全体像をつかむために簡略はするわね。)
その8つの建築様式とは、
ギリシャ建築
ローマ建築
ロマネスク建築
ゴシック建築
ルネサンス建築
バロック建築
新古典主義建築
ネオシリーズ建築
そして、
ギリシャ建築・ローマ建築は古典建築、
ロマネスク建築・ゴシック建築は中世建築、
ルネサンス建築・バロック建築は近世建築、
新古典主義建築・ネオシリーズ建築は近代建築
と呼ばれているの。
それぞれの建築様式に非常に特徴的な表現方法があるので、この流れを理解すると、ガイドブックを見なくても、自分で区別がつくようになるわよ。
ギリシャ建築

紀元前の古代ギリシャ人は、神様に捧げるための美しい神殿を作ることを求めたの。
世界遺産にも登録されているギリシャ、アテネのアクロポリスにあるパルテノン神殿は、最も有名なギリシャ建築の一つ。
この時代の美しさというのは、数学的な美しさを指していたの。
数学者ピタゴラスが「万物の根源は数」といったように、数学的に綿密に計算されて、規則性のある建物が最盛期を迎えるの。
柱の高さ
柱の太さ
柱の間隔
が細かく計算され、またそれらが非常に高度な技術で造られていたの。
ローマ建築

ギリシャ時代のあとに続くのがローマ時代。
紀元前から4世紀頃までに盛んだった建築様式を指すの。
それまでギリシャ建築では、ひたすら神様のための美しい建築が造られていたけど、ローマ時代の建築は、もっと実用的で大衆的な建物になっていったの。
世界遺産にも登録されているイタリア、ローマの歴史地区にあるコロッセオは、有名なローマ建築の一つ。
円形の闘技場で、その中では人と人や、人と猛獣が闘い、それを数万人の観客が楽しむという、いわゆる娯楽施設だったの。
また、スペインのセゴビアにある世界遺産、旧市街と水道橋もローマ建築の代表的な建築物の一つ。
水道という人々の生活に欠かせない公共施設としての役割を担っていたのよ。
ローマ建築はギリシャ建築をお手本にしているので、規則的で計算された造りという点では共通点が見られるわ。
ギリシャ建築とローマ建築のグループは古典建築と呼ばれるの。
ロマネスク建築

ロマネスクという言葉は日本語にすると、ローマ風のという意味になるの。
すなわちローマ建築を受け継いだ建築様式だということが分かるわね。
ローマ建築は巨大な勢力となった古代ローマ帝国のもとで発展していったの。
その次の時代を担うロマネスク建築を理解するためには、ロマネスク建築が生まれるきっかけとなった歴史を振り返る必要があるわ。
そして、それはローマ時代にさかのぼるの。
古代ローマ帝国で押さえておく点は三つ。
①ローマ帝国の東西分裂
②キリスト教の公認
③ゲルマン民族の大移動
ローマ帝国の東西分裂
強大なローマ帝国はやがて東ローマ帝国と西ローマ帝国に分裂することに。
この分裂の際に、現在のスペインを含むイベリア半島地域は、西ローマ帝国と呼ばれていたの。
キリスト教の公認
ヨーロッパといえばキリスト教というイメージがあるわよね。
キリスト教が成立してからも、数世紀のあいだは、ローマ帝国ではキリスト教が禁止されていたの。
スペインを始めヨーロッパの国々の基盤となったこのローマ帝国で、キリスト教が公認されたのは、313年のミラノ勅令。
ヨーロッパの歴史において、313年というのは一つの分岐点になるわけ。
キリスト教が認められたことにより、各地に教会ができ始めるの。
ゲルマン民族の大移動
ローマ人の住むローマ帝国にゲルマン人という別な民族が押し寄せてくることに。
これが原因となって、西ローマ帝国は476年に滅亡してしまうことになるの。
こうしてヨーロッパの歴史の流れが大きく変わり、それに合わせてヨーロッパの建築様式も大きく変わっていくことに。
ゲルマン人は教会を建てていく際に、それまでローマ帝国で育まれた壮大なローマ建築やローマ人が手本にしたギリシャ建築をマネた建築をしようと考えたわけ。
しかし、実際に手を付けてみると、ギリシャ・ローマ建築の技術の高さに驚き、難しすぎて、簡単にはマネができないことを悟るの。
重機も何もなかった時代に、あれだけ大きな石を積み上げたり、加工したりと言うのは、現代の私達からしても、一体どうやってやったんだろうと思うくらい。
結局ローマ建築をマネすることもできなかったゲルマン人たちは、見よう見まねで、あるいはゼロから自分で考えて教会のようなものを造っていくことになるの。
しかし、初期の頃のそれは、ロマネスク(=ローマ風の)と呼べるような代物ではなく、長い年月をかけて少しずつ造り上げていった建築様式がロマネスク建築なのよ。
ロマネスク建築は建築史的には、10〜12世紀ごろの教会建築のことを指すの。
気づいた人もいるかも知れないけど、ロマネスク様式がが一つの建築様式として確立するまでに、およそ500年の年月を要したことになるのよ。
ロマネスク様式の代表的な建築に、世界遺産にも登録されているイタリア、ピサのドゥオモ広場にあるピサの大聖堂があるわ。
ロマネスク建築の特徴は、なんて言ってもあのどっしり感ね。
まだ建築技術が未熟だったために、建物が崩れないように壁を分厚くする必要があり、それゆえに重厚な外観となっているの。
ゴシック建築

主に教会を建てることを目的として、切磋琢磨して発展してきたロマネスク様式だけど、これには大きな問題点があったの。
①壁を分厚くすることで全体の重みが増し、高さの高い教会を造ることができない。
②強度の問題から、窓を造ることができなかったため、教会内部はとても薄暗い感じになる。
これらを改善すべく、研究を重ねて生まれたのが、ゴシック様式なの。
建築技術の向上により、天井部分に工夫をすることや、壁を単に積み上げていくだけでなく、外側から支える仕組みを考案したことで、壁を薄くすることに成功。
これによって、高さの高い教会を造ることができるようになったの。
そして、窓をたくさん作れるようになり、教会の内部が明るくなったの。
また、ステンドグラスで、聖書の物語を表現することにより、文字の読めない人にも、キリスト教の教えをよく理解してもらえるようになったのよ。
ゴシック建築最大のものといえば、世界遺産にも登録されているドイツ、ケルンにあるケルン大聖堂。
高さは世界最大の157mもあるゴシック建築。
ゴシック建築は、12〜15世紀ごろに発展した建築様式のことを指すの。
ロマネスク建築とゴシック建築のグループは中世建築と呼ばれるの。
この2つの建築様式に共通しているのは、教会の建設のみに用いられた建築様式ということ。
ルネサンス建築

ルネサンス建築の代表的なものといえば、イタリア、フィレンツェ歴史地区にある、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。
もちろんこちらも世界遺産に登録されているわ。
この建築様式の特徴は、何と言っても、あの堂々とした大きなドームね。
そして、古典的な造りも特徴の一つよ。
なぜ古典的な建築がまた登場するのかと思うわよね。
この時代の人々は、かつてのローマ時代の建築の技術の素晴らしさを改めて評価し、ローマ建築を復興させようと努力していたからなの。
ルネサンス建築は、15〜16世紀にかけての建築が多く見られるわ。
バロック建築

17世紀になると、建築様式にまた新たな発展が見られることに。
ここでもう一度ヨーロッパの歴史を振り返っておく必要があるわね。
この少し前の16世紀のヨーロッパでは、宗教改革が起こったの。
教会は免罪符を発行し、それを魂の救済の方法として奨励したの。
教会や聖堂の改築のための費用、教会の活動のための資金を提供したものが、罪を許されるといったような教会の世俗化が進んでいったわ。
こうした教会を痛烈に批判したマルティン・ルターなどの活動がきっかけとなり、ヨーロッパでは宗教改革が進んでいくことになるの。
それによって教会の権力は弱体化し、人々はキリスト教から離れていってしまうことになるの。
そうした状況から抜け出そうと、必死に人々の目に留まるような豪華絢爛な装飾をした教会が造られるようになり、これがバロック建築。
バロック建築の代表的なものに、イタリア内にある小さな国、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂があげられるわ。
こちらは国全体がバチカン市国として世界遺産に登録されているの。
内部の装飾もとても豪華なのがバロック建築の大きな特徴ね。
そして、忘れてはいけないのが、このバロック様式も古典建築をお手本にしていたということよ。
ギリシャ神殿のような柱、ローマ建築を復興させようとしたルネサンス建築の特徴の大きなドームが、バロック建築の特徴ね。
ルネサンス建築とバロック建築のグループは近世建築と呼ばれるの。
新古典主義建築

新古典主義建築を一言で言うと、ギリシャ建築を復興させようという建築様式。
新古典主義建築の代表的なものには、ドイツの首都ベルリンにある、ドイツ東西の分離と統合のシンボルで、ブランデンブルク門。
イギリスの首都ロンドンにある、世界最大の博物館、大英博物館。
そして、スペインの首都マドリードにある、世界三大美術館の一つ、プラド美術館。
いずれもギリシャ建築の神殿のような立派な柱があり、よく見ると、古代ギリシャ建築にそっくりよね。
でも、ギリシャ、アテネにあるアクロポリスの丘の遺跡のように柱だけが残った古代ギリシャ建築ではなく、18世紀後半〜19世紀に造られた近代の建築なの。
ネオシリーズ建築
ネオシリーズ建築という言い方は、ネオと名のつく一連の建築様式をわかりやすくまとめるために、私が勝手に呼んでいるだけなの。
なので、建築史としての専門用語として使われているわけではないのよ。
具体的にはいくつものネオ建築があるの。
ネオ・ロマネスク建築
ネオ・ゴシック建築
ネオ・ルネサンス建築
ネオ・バロック建築
ネオとは新しいという意味で、これらの建築様式は、それぞれロマネスク建築、ゴシック建築、ルネサンス建築、バロック建築を復興させようという運動から生まれた建築なの。
時期は新古典主義建築と同じく18世紀頃から始まったの。
先程の新古典主義建築も、言ってみれば、ギリシャ建築を復興させようとしているので、ネオ・ギリシャ建築と言えなくもないわね。
さらにルネサンス建築も、その中身はローマ建築を復興させようという動きから生まれたものなので、ネオ・ローマ建築を言えなくもないわね。
でも、日本語ではルネサンス建築、新古典主義建築という方が一般的な呼び方よ。
古典建築を復興させるという運動から生まれたことから、これらネオのつく一連の建築様式を復興という意味のリバイバルという名前で呼ぶこともあるわ。
例えば、ロマネスク・リバイバル建築、ゴシック・リバイバル建築、ルネサンス・リバイバル建築、バロック・リバイバル建築というふうにね。
ネオとリバイバルのいずれの呼び方も同じ建築様式を指しているの。
新古典主義建築とネオシリーズ建築のグループは近代建築 と呼ばれるの。
この建築で大事なことは、中世建築が教会の建設のみに用いられた建築様式であったのに対し、近代建築は教会以外の建物にも応用されるようになったことね。
…まとめ
大きく8つのグループに分類できるヨーロッパの建築様式。
ギリシャ建築
ローマ建築
ロマネスク建築
ゴシック建築
ルネサンス建築
バロック建築
新古典主義建築
ネオシリーズ建築
以上、ヨーロッパの建築様式の基礎知識を紹介させていただきました。
ヨーロッパの建築の歴史は、ヨーロッパのキリスト教の歴史と大きな関わりがあるの。
それゆえに、ヨーロッパの教会の作りの中に具体的な背景や人々の思いを見てとることができるのよ。
もちろんヨーロッパの建築の歴史はこの8つの分類だけで語れるものではなく、もっと細かいわ。
でも、この8つの建築様式は、柱となる重要な建築様式なので、まずはこれらを頭に入れておけば、ヨーロッパの建築様式は大丈夫。
これらを押さえておくだけで、ヨーロッパ旅行が更に楽しくなることは間違いなしよ。
最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。