ガウディ

【2021年版】【徹底解説】世界遺産「アントニオ・ガウディの作品群⑦」コロニア・グエル教会

Colonia Guell

こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。

Hさん
Hさん
「ガウディ建築の世界遺産に、サグラダ・ファミリアと同じように未完の作品があるって聞いたんだけど、どのことかしら。」

モニカ
モニカ
「きっと、バルセロナの郊外にあるコロニア・グエル教会のことね。数ある作品の中での最高傑作と呼ばれるもので、建築に興味のある人やガウディ好きの人には見る価値が十分ある作品よ。」

ということで、シリーズ最終回の今回は「アントニオ・ガウディの作品群」のコロニア・グエル教会を詳しく解説していきますね。

※現在コロニアル・グエル教会は当面の間、閉館となり再オープンの日時は今のところ決まっていません。最新情報が分かり次第、情報を更新していきますね。

コロニア・グエル教会とは

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バルセロナの中心部から郊外へ15km、スペイン広場から電車で25分ほどのサンタ・コロマ・ダ・サルバリョー市にある、世界遺産コロニア・グエル教会。

繊維業界で大成功を収めていたグエル氏が、バルセロナ市内の繊維工場を、当時田畑と山に囲まれた何も無かったこの田舎に移そうと計画。

同時に工場で働く労働者用の住宅施設、学校、商店、旅館、劇場、文化センター、教会などを含めた工業コロニーを作り、その中心となる教会の設計をしたのがガウディ。

1898年に設計を開始して、逆さ吊り模型の制作に最初の10年間を費やしたため、工事が実際に着工されたのは6年後の1908年

さらにその6年後の1916年、グエル氏が亡くなり、ガウディ自身もサグラダ・ファミリアの建設に専念するため、未完成にも関わらず教会建設の仕事から手を引くことになったの。

本来は半地階部分と上部の教会部分との二層構造の建物だったんだけど、上部が未完だったため、元々はキリスト教教育のための教室として使用するはずだった半地階部のスペースを、やむなく教会として使用することになったわけ。

この時の逆さ吊り実験は、その後のサグラダ・ファミリアへの建設へと活かされ、ガウディ円熟期の建築を知る上で非常に重要な作品と言えるわね。

知っておきたいキーワード

初めに、コロニア・グエル教会は建築の専門家や余程建築に興味を持っている方でないと満足を得るのは非常に難しいガウディ建築作品の観光スポット。

サグラダファミリアの迫力やカサ・バトリョ、カサ・ミラのような高い芸術性は無く、地味な上に規模も小さく何も知らずに訪れると、30分も持たないわね。

実際、ほとんどの人がサクッと見た後に手持ち無沙汰に椅子に座って、スマホをいじっているという感じ。

組積造(メーソンリー)(積み木工法)

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ヨーロッパで見かける古い石造りの建物や教会は、レンガや石を積み上げて作った組積造(そせきぞう)=メーソンリーと呼ばれるもの。

この積み上げ式の建築方法の起源はピラミッドに見られる古代エジプト時代が始まり。

その後にアーチが発明され、アーチを横に延長したものがヴォールト、さらにアーチを360°回転させたドームへと発展。

最終的に大聖堂の大天井支える工法が生み出されることになったの。

現代の建築工法との一番の違いは、建物にかかる力をアーチを介して全て圧縮力のみで支えるという、一言でいうと、バランスよく積んだ積み木工法と言ったところ。

そして、この工法で教会の様な天井を支え、窓のような開口部を支えて建てる時に重要となるのがカテナリー曲線。

カテナリー曲線(アーチ

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カテリーナとはロープや鎖などの両端を持って垂らしたときにできる曲線のこと。

それを上下逆向きにした形状にすると、全ての部分に均等に圧縮力がかかることになり、最も安定するため、現在でもアーチ橋などに多く用いられているの。

ガウディはこのカサ・ミラやカサ・バトリョの屋根裏などの作品にカテリーナアーチを使用したのよ。

というのも、安定した構造に加え視覚的にも美しく、レンガ積みの構造は制作しやすく、また経済的な方法でもあったからなの。

カタリーナアーチを建物全体に応用しようと言うガウディの壮大な計画が、次の逆さ吊り(フニクラ)の実験へと繫がっていくの。

逆さ吊り(フニクラ)実験

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この教会を知る最大のポイントは、ガウディが10年もの歳月を費やし、結局は未完成に終わった逆さ吊り実験。

天井に下がる紐の両端を止めて、その紐に重りをぶら下げると、自然な弧が描くきょくめんができるの。

それを上下逆さまにして、荷重を合理的に分散する、自然で丈夫な構造形態を求める実験のことね。

コロニア・グエル教会の実験はサグラダ・ファミリアの中のガウディのオフィスで行われていて、現在地下博物館で見ることができるわ。

営業時間・休館日

営業時間
【11月1日〜4月30日】 (月曜)     ・10:00 – 17:00
.          (火〜日曜、祝日) ・10:00 – 15:00
【5月1日〜10月31日】 (月曜)     ・10:00 – 19:00
.          (火〜日曜、祝日) ・10:00 – 15:00

※ 最終入場は営業時間の1時間20分前までになります。

休館日 1月1日、1月6日、4月5日、12月25日、12月26日

混雑具合・行列回避方法

世界遺産に登録されているガウディ作品といえど、行列を作ることもまずないわね。

当日コロニア・グエル教会から徒歩3分のところにあるインフォメーションセンターで入場チケットを買っても全く問題なし。

サグラダ・ファミリアなんかと違って完売することが無いので、わざわざネットで事前に予約する必要もないわ。

逆に予約入場時間に縛られることになって、却って不便かもしれないし、ネットで事前に予約しても、インフォメーションセンターに立ち寄って、チケットに交換する必要があるのよ。

見学時間の目安

建築に特に興味がない人には、正直10分も見れば十分かも知れないけど、ガウディが好きで建築に興味があるなら、1時間ほど見ておいたほうが良いわね。

見学のテクニック

オーディオガイドは追加料金(2€)で借りられるので、必要な人はチケットを買うときに一緒に借りれば大丈夫。

ただし、日本語ガイドはなく、教会に関する解説も少なく、大半は村の建物巡りの音声ガイド(1時間半)のようになっているわ(笑)。

また、パスポートをデポジット代わりに預けなければならないので、借りるつもりの人は、パスポートのオリジナルを持参することを忘れないように。

見どころ・見学コース

外観

本来のコロニアグエル教会は二階建ての造りになっていて、地下礼拝堂の入り口の真上に、本来の教会の入口を作る予定だったの。

地上階にある礼拝堂がなぜ地下礼拝堂って言うのかは、元々ここは傾斜地だったのね。

ガウディはこの土地を出来る限り自然の状態で建てたかったので、傾斜の始まる上を教会の地上階に、傾斜が終わる階段下の礼拝堂を地下にすることにしたわけ。。

① トレンカディス

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ガウディの定番と言えるトレンカディス(破砕タイル)が、コロニア・グエル教会でも至るところに見られるわ。

キリスト教徒にって重要な宗教的シンボルが外壁のトレンカディスに多く使われていて、地下礼拝堂入り口の上のモザイクには、特に小さなピースを使って聖書の言葉を表しているわ。

ただ、工事が途中で中断し未完に終わったために、教会の裏側の窓のひさしはタイルが貼られず、モルタルが塗られただけで終わっているの。

② 素材

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地下礼拝堂の外側を見てみると、他の教会とは全く異なるのが見て取れるわ。

茶色くて、ゴツゴツしていて、一見すると教会には見えないその建物は、周りの松林ととても馴染んでいるの。

外壁には様々な素材を使用して、教会の基礎部分は瓦礫のように仕上げて自然感を出し、柱には周りに生える松の木の幹と同じトーンの溶岩のように見える黒い小石の素材が使われていたり、焼きレンガが細かく積んであるの。

③ リサイクル

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また、礼拝堂の窓の金網はコロニア内の繊維工場の廃品をリサイクル利用したもので、機織り機械ののスクラップから使える部分を格子状に編んで再利用しているのが見られるわ。

④ 三位一体説

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礼拝堂の入口上部にある一番目立つモザイクは、聖書に書かれている重要なシンボル、三位一体説が表現されているの。

右側の白地のひし形にはカタルーニャ語でPater(父)のP、左側の白地のひし形にはFilius(子)のF、中央にはSpiritus Sanctus(聖霊)のSが見えるのが分かるかしら。

さらに、中央の白抜き部分は聖母マリアの合わせ文字、中央最上部の円形は十字架に火炎が押しかかる様子が描かれていて、キリストの磔を表しているわ。

⑤ 4匹の魚

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礼拝堂入り口の右上の壁に描かれた4匹の魚のモザイクは、ギリシャ語で「イエス・キリスト、神の子、救世主」の三つの頭文字をあわせると魚の意味になり、キリストを表しているの。

キリスト教信徒の間では、ローマ帝国からお尋ね者扱いされていたキリストをローマ兵から守るため、キリストを暗号で呼んでいたのよ。

また魚=キリストの下の【Α(アルファ)】と【Ω(オメガ)】は、ギリシア文字の「最初」と「最後」の文字で、永遠の存在であるイエス・キリストが生から死までの全てを司ると言うことを表現しているの。

⑥ 待合室

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礼拝堂の入り口の反対側を見ると、教会の入り口への階段になるはずだったところの下に半地下の小さな空間が見えるわ。

スペインの田舎の教会によくみられる待合所で、ミサの始まるまでの間やミサの後に、ここで主婦たちがベンチに座り世間話や井戸端会議をしていたのね。

高温になるスペインの夏でも、この半地下の待合は涼しく、格好の涼みスポットになるのよ。

内部

礼拝堂の内部は、一般の教会とは全く異質の正に「ガウディワールド」のオンパレード。
ゴシック建築の影響を受けた部分もあれば、椰子の木が連なるような天井、そして石器時代を思わせる玄武岩の支柱。

施主グエル氏はこの教会建設をガウディに任せるにあたり、予算も作品の種類に関しても、いかなる制限も設けなかったのよ。

⑦ 石柱

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教会の天井を支える柱に目をやると、どれも微妙に傾斜していて、素材・デザイン共に変化に富んでいるの。

特に、天然石の玄武岩をそのまま利用した柱は、これまでの中世の教会イメージを完全に打ち破り、キリスト以前の古代へと誘う不思議な世界感を出しているわ。

教会中心部の4本の柱に玄武岩の石柱が使われているのは、建物の重量が最もかかる場所だから。

また、レンガの代わりに石を使うことで、柱の太さを細くでき、後ろの席からの礼拝堂がよく見えるようにしたの。

また、玄武岩の天然石は適当に斜めに立てた様にも見えるけど、実は度重なる逆さ吊り実験で得た中心線が石の中を寸分狂いなく通っているわ。

⑧ 天井

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圧巻はガウディの最高傑作と言われる所以のレンガ造りのアーチ状の天井。

10年もの歳月を費やした逆さ吊り実験の末に到達したのがこのヤシの木をイメージしたとも言われているの。

注目すべきはカタルーニャ地方でよく使われる、通常の半分ほどの厚みの薄いレンガを使った複雑なカテナリー曲線のアーチ

一見奇をてらったかのように見える動物のあばら骨のようなアーチは、よく計算し尽くされていて、その特異なリブ構造が屋上を安定的に支えているの。

祭壇の裏は礼拝堂より一段高くなっているのは、ガウディが傾斜の丘を自然のまま残すために、ここは掘り下げなかったから。

また、この空間は子供たちの合唱隊が讃美歌を歌う為の場所で、うまく音が響くように考えられているわ。

⑨ ステンドグラス

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礼拝堂のステンドグラスもガウディの右腕、ジュゼップ・マリア・ジュジョールの作品。

教会の周りが松林だったこともあり、松ぼっくりをデザイン化したもの。

どの季節でも、最大限の光が教会の中に入るように計算され、機能性とデザイン性を考えて造られているの。

普通、教会の祭壇は聖地エルサレムの方角に向けて建てられるんだけど、光が何より重要だったガウディは、祭壇を反対の北向きに立てたのね。

太陽が昇ると東の窓から光が入り、太陽が沈む時には西の窓から最後の光が入るというように、すべての時間において光が入るよう考えられているのよ。

これと同じことがサグラダ・ファミリアにも見て取れるわね。

ステンドグラスは窓から教会内へ風を送り込めるように、蝶の羽根のように開閉式になっていて、上下左右の羽根を全部開けると十字架の形になるのよ。

⑩ 椅子

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教会内には、ガウディが座り心地にこだわってデザインした椅子が、祭壇を取り囲むように同心円状に配置されているわ。

椅子にはトネリコという硬くて丈夫で弾力性のある素材が使われていて、この椅子に腰掛けゆっくりともたれ掛かると、背中にちょうどフィットして落ち着くの。

祈りの際に隣りの人に煩わされることなく自分の世界に入れるように、椅子は一直線ではなくお互いの体が微妙に外側に向くように工夫されているのよ。

ただし、ここにあるものはレプリカで、本物は全てガウディ博物館に保管されているわ。

⑪ 聖水盤

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礼拝堂に入ったところには、信徒が教会に入るときに身を清めるための聖水盤が置かれているの。

ヨーロッパでは大理石の聖水盤がよく見られるけど、フィリピンがスペインの植民地だった時代にシャコ貝が大量に持ち込まれていたことから、スペインではしゃこ貝のものがよく見られるわ。

ちなみに、サグラダファミリアの生誕・受難のファザードを入ったところにあるシャコガイの聖水盤は、グエルが寄付したものなのよ。

その他

⑫ 教会裏

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最後に教会内の裏に回ってみると、礼拝堂のステンドグラスを外から見ることができるわ。

外壁が傾斜しているのは、あの逆さ吊り実験で得た傾斜のままに忠実に建てたからなの。

⑬ 教会になるはずだった場所

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高さ40mの塔が建つはずだった教会の二階部分は、現在は何も無く、本来の教会の床が礼拝堂の屋根・屋上となっているの。

途中までできていた塔に付けられた鐘は、工事が途中で終ってしまい未完となったため、村人達が何とか礼拝する為の場所をということで、弟子たちが取り敢えず付けたもの。

未完に終わった屋上に関しては、ただの見晴らし台としての価値以外はほとんどないわね。

グエル教会のオーディオガイド付きチケットを買うとこの地図をくれるけど、オーディオガイド無しのチケットでも、地図は無料でもらえるわ。

ギフトショップ・おみやげ

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コロニア・グエル教会から徒歩3分のところにあるインフォメーションセンターの中には小さなギフトショップがあるの。

…まとめ

教会自体は未完と言うのもあり、仮に完成していたとしてもこじんまりしたものなので、サグラダファミリアを見た時の様なインパクトは無いかも知れないわね。

ただ、ガウディの死後も他人の手によって本来とは別の容姿で現在も工事が続くサグラダ・ファミリアと違い、100%ガウディが作った教会とも言えなくもないわ。

数ある作品の中での最高傑作と呼ばれるコロニア・グエル教会は、建築に興味のある人やガウディ好きの人には見る価値が十分あると言えるんじゃないかしら。

最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。

参考➡コロニアル・グエル教会公式サイト

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