ガウディ

【2021年版】【徹底解説】世界遺産「アントニオ・ガウディの作品群④」カサ・ミラ

Casa Mila exterior

こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。

Aさん
Aさん
「バルセロナ市内を観光中に、周りの建物とはひときわ異なる奇抜なデザインの建物があるんだけど、ひょっとしてあれもガウディ建築なのかしら。」

モニカ
モニカ
「そうよ、グラシア通りに面したもう一つのガウディ建築の代表作品で、世界遺産にもなっているカサ・ミラよ。」

ということで、シリーズ第四回目の今回は「アントニオ・ガウディの作品群」のカサ・ミラを詳しく解説していきますね。

カサ・ミラとは?


Casa Mila

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カサ・ミラ(Casa Milà)は、1984年に「アントニ・ガウディの作品群」として世界遺産にも登録されているガウディ建築物の代表作の1つよ。

1906〜1910年にかけて建設された、バルセロナの実業家ペレ・ミラ氏と妻ルゼー・セギモンのために建築した邸宅兼集合住宅。

あたかも砂丘か溶岩の波のような、全く直線部分を持たない非常に印象的な外観は、一般的な現代建築のそれとはかけ離れたデザインとなっているわ。

外観の波打つ曲線は地中海をイメージして作られているのよ。

建設当時、奇抜すぎるデザインが時代の先端を行き過ぎていて、バルセロナ市民からは「石切場(La Pedrera)」というあだ名で呼ばれるほど酷評されていたの。

邸宅兼集合住宅ということだったんだけど、建設当初、奇抜な外観のデザインと月給の10倍という高額な家賃が敬遠され、なかなか借り手がいなかったの。

そこで、三世代に渡って値上げをしないという条件で借り手を募集し、当時の家賃のままで、今も世界遺産のカサ・ミラの部屋を借りている人がいるというのは有名な話ね。

聞くところによると、現在でも家賃は約15万円ほどで、今でも4世帯が借りていて、一番長い借り主の家族は70年以上に渡って住んでいるそうよ。

奇抜なデザインはどこから?

Casa Mila

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専門家たちの推測では、恐らく以下の4つのどれかではないかと言われているの。

① バルセロナ近郊にあるカタルーニャの聖地、モンセラットの山

② バルセロナ近郊にある渓谷、サン・ミケル・デ・ファイ

③ トルコの中央アナトリアの歴史的地域、カッパドキア

④ 当時ヨーロッパで流行していた浮世絵師、葛飾北斎の版画「富獄三十六景」

生前、ガウディが多くを語らなかったことからも、一体何からカサ・ミラのデザインのインスピレーションを得たのかは、未だに誰も確かなことは分かっていないわ。

営業時間・休館日

■営業時間 (※毎週金、土、日及び祝日)
・冬期(2019/10/1 – 2021/3/4)
通常営業 :9:00 – 18:30
夜間ツアー:18:30 – 20:00

・夏期(2021/3/5 – 2021/9/30)(※開館時間は未定)
通常営業 :9:00 – 18:30 
夜間ツアー:18:30 – 20:00

・クリスマスシーズン(2020/12/26-2021/1/3)(※開館時間は未定)
通常営業 :9:00 – 18:30
夜間ツアー:18:30 – 20:00

・早朝ツアー:8:00

■休館日:12/25

突然の営業時間の変更などもありるので、公式サイトの営業時間も必ずチェックしてくださいね。
(カサ・ミラ公式サイト)➡営業時間

混雑具合・行列の回避方法

Casa Mila

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夏休みや年末年始などの繁忙期は、当日券のチケット窓口が長い行列でとても混雑することがあるみたい。

優先入場はしなくても、ネットで事前にチケット予約をしておけば、当日券のチケット窓口での行列をスキップできるわ。

少し予算に余裕があるなら、おすすめはLa Pedrera Premiumというプレミアムチケット。

混雑が予想される繁忙期であっても、建物正面にある専用の入口から行列を気にせず優先入場でき、しかも日時の時間指定さえないので、前後の予定に縛られることもないわ。

見学時間の目安

見学時間は、公式ページにも記載されている通り約1時間〜1時間30分程。

ただし、優先入場できるプレミアチケット以外の場合、館内に入場するまでの行列に並ぶ時間やギフトショップでお土産を物色する時間も加味しておいたほうが良いわ。

また、混雑しているときは、写真を撮るのに順番を待ったりするので、余裕を見て2時間を見ておけば大丈夫ね。

見学のテクニック

Casa Mila

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建物内を一般見学できる個所が5ヶ所だけなので、迷ったり見どころを見逃したりすることは少ないと思うけど、移動ルートが少しわかりにくいかも知れないわね。

チケットには、古いタイプのオーディオガイドのサービスが付いていて、見どころの説明はオーディオガイドのポイントに近づくと、自動的に説明が流れるようになっているわ。

見どころ・見学コース

外観(ファサード)

Casa Mila

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なんといっても、カサ・ミラを初めて目にしたときの印象は、周りに立ち並ぶクラシックな建物とあまりにもかけ離れた150もの窓が並ぶ奇抜な外観。

バルセロナ市から「石切場」とあだ名されるだけあって、外観はバルセロナ郊外のエル・ガラフで取れる石灰岩が使われているの。

グラシア通りの角にある幾つかのバルコニーをよく見ると、床に穴を開けてガラス床にすることで、可能な限り自然光を通し明るさをっているのよ。

(豆知識)

バルセロナで一番の一等地に建つカサ・ミラは、住宅としては他に類を見ないほどの大規模な建物。

敷地面積はカサ・バトリョの2軒分以上に相当し、地下から屋根裏部屋までの8階建て。

さらにミラ氏がレースを主催する程の車好きだった事もあり、バルセロナでも最初となる地下駐車場が建物内に作られたの。

建築費に至ってはカサ・バトリョの10倍にも達し、いかにミラ夫妻が当時バルセロナのブルジョワの中でも、トップクラスの資産家だったというのがうかがい知れるわね。

欄干(手すり)

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直線を一切使わずうねるような曲線だけの地中海をイメージさせる外壁だけでなく、同じものが二つとしてないバルコニーの鉄製の欄干のデザインも見どころの一つ。

不要タイル、皿、コップ、瓶などを作品の壁面によく利用したガウディは、ここでもその才能を発揮しているのよ。

鉄板、鎖、鉄の網、鉄管、鍋などあらゆる種類のくず鉄を使い、裁断したり曲げたりして、鋲止めという手間のかかる職人技術で、二つとして同じもののないデザインになっているの。

海の中に漂う海藻にみえる欄干の中には、リボンや鳩、人の顔、また一体何を表しているのか分からない抽象的な物まで見て取れるわ。

中庭(パティオ)

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中に入ると、石切り場とあだ名された外観と同じ曲線でも、まったく違った雰囲気をかもしだし、まるで深い海底にいるような印象を受けるわ。

地上階にある中庭は二つあり、通常の入場口側の楕円形の中庭と、優先入場口側の円形の中庭。

中庭(パティオ)から上を見上げると、高さ30mの垂直にぎっしりと並んだ窓の集合体に圧倒され、更に上を見ると、楕円に切り取られた空がぽっかりのぞく不思議な光景。

ヨーロッパの人には、中世のゴシック様式と感じるようだけど、味方によれば、刑務所の中のようにも感じなくもないわね。

中庭(パティオ)内の建物にぎっしり並んだ窓をよく見ると、自然光が均等に取り込めるよう、下階ほどサイズの大きな窓に作られているの。

この手法は、ガウディのもう一つの代表建築、カサ・バトリョにも見られるわね。

また、夏場には合計150ある上下の窓を同時に開けることにより、室内の温度を効率良く均等に下げる役目もしているのよ。

通常入場口側の楕円形の中庭は完全な吹き抜けになっていて、たくさんの日差しが差し込混んでくるわ。

もちろん、雨の日は容赦なく雨しずくが中庭(パティオ)を濡らし、まるで熱帯雨林を思わすような自然を取り入れたデザインがあちこちに見て取れるわね。

一方、中庭(パティオ)の下部に目をやると、そこに広がるのは上部とは一転して華やかな世界。

ただし、ガウディと施主ミラ夫婦とのトラブルで、ガウディが途中で建築から手を引き、そこに描かれている絵はガウディとは関係のないスペイン人画家シャビエ・ノゲスの作品。

一方、 グラシア通りの優先入場口側にあるもう一つの中庭(パティオ)は、円形の中庭で、通常の入場口側の楕円形の中庭に比べて小さいため、その分暗くなっているの。

屋上テラス

Casa Mila

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エレベーターで屋上まで上がりテラスに出ると、これまでの光景が一転して、高低差のある波打つ構造の床は、山の峰をイメージしているのよ。

カサ・バトリョのカラフルな屋上と違い、全体がクリーム色で統一されていて、ユニークなデザインが際立っているわ。

屋上テラスにあるデザイン性に富んだ30本の煙突、2つの通風孔、6つの階段昇降口(上部には貯水タンクが設置)の全38基のオブジェは、ガウディ建築の真骨頂ね。

ユニークなオブジェの一つ、キリスト生誕の際に聖書に出てくる兜をかぶったローマ兵をイメージした煙突は、サグラダ・ファミリアの受難の門にも見られるの。

屋上にあるオブジェをよく見ると、どれも曲線をベースにしているけど、二つの種類があるのが見て取れるわね。

一つは素焼きの鉢、テラコッタ風の防水モルタルで作ったオブジェ、もう一つはトレンカディス(破砕タイル)を全体に貼り付けたオブジェ。

煙突、通風孔、階段昇降口のデザインは、兜を被ったローマ兵、メビウスの輪を合わせたもの、きのこからインスピレーションしたもの、メレンゲの素焼き菓子、笑うブッダなどなど。

地上から屋上まで30mほどのカサ・ミラは、思った以上に高さがあり、目抜き通りのグラシア通りや周りのビルに住む住人の庭、オフィスなどが見下ろせるわよ。
Casa Mila

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また、屋上の一端からはアーチ越しにサグラダファミリアの受難のファサードが見える、人気の撮影スポットがあるわ。

ただし、日中はいつも混雑していて、記念撮影のための順番待ちの長い列が出来ているので、時間のない人は別のアングルから撮ることをおすすめするわ。

屋根裏(The Attic)Espai Gaudí

Casa Mila

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屋上を降りてその後に続くのが、バスケットコート2面分の広さを持つ屋根裏。

もともと洗濯物置き場、物干し場、使用人の作業場、また冬は暖かく、夏は涼しくとフロアーの温度を調整する機能も担っていた空間よ。

この空間を最適な温度に保たれるように調節しているのが、屋根裏の外壁に設置された上下大きさの違う窓。

この広いアーチ状の回廊のフロアーは、「エスパイ・ガウディ(Espai Gaudí)」と呼ばれ、ガウディ建築に関する展示スペースとなっているの。

最初に目に飛び込むのが、まるで動物のあばら骨にも見える天井を支える273本のカテリーナアーチ

屋上のテラスの床が高低差のある波打つ構造になっているのは、各アーチの高さが異なるから。

注目すべきは、ラジョーラ(Rajola)と呼ばれる地元カタルーニャ産の薄レンガを使い、屋根裏構造(カテナリーアーチ)を用いて、屋上を安定的に支えてせていること。

カサ・バトリョでも同様のロープや鎖などの両端を持って垂らしたときにできるカテナリー曲線の手法が使われているのよ。

ガウディはこのカサ・ミラの他に、既に述べたカサ・バトリョの屋根裏、更にサグラダファミリアにもカテナリーアーチの構造を使用しているの。

展示スペースの「エスパイ・ガウディ(Espai Gaudí)」には、カサ・ミラの模型をはじめ、サグラダ・ファミリアにも展示されている有名な逆さ吊り模型フニクラ」が展示されているわ。

ガウディは椅子などの家具も建物の一部として設計し、ガウディ後期の傑作とされるコロニア・グエル教会では、礼拝席がみごとに教会の一部になっているわね。

さらに、引き出しの金具の取っ手など、ガウディは日常生活で普通に目にする植物や生物から多くのインスピレーションを受け、それをデザインに生かしているの。

アパートメント

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家主のミラ夫婦が住んでいた二階部分は、現在は特別展示会場として使用され、不定期にいろいろな展示がされ、住宅部分で見学可能なのは、屋根裏部屋の下の1フロアーのみ。

カサ・ミラの4階部分の円形の吹き抜けのある側の半分のフロアが一般公開されていて、残り半分はプライベートスペースとなっているので、実際に住人が住んでいるのかも。

中はサロン、ベッドルーム、キッチン、ダイニング、使用人室、浴室、子供部屋、などが再現されているの。

そこには20世紀初頭(日本の明治末期〜大正初期)に使用されていた家具や日用品などが置かれていて、当時のブルジョワ階級の生活を垣間見ることができるわ。

サロンには蓄音機、寝室にはベビーベッド、子供部屋には木馬や人形、書斎の机の上には電話とインクセット、使用人室にはアイロンやミシンなどできるだけ当時の状況を再現。

ただし、そこから受ける印象は平凡なもので、ガウディらしい芸術性はほとんどないわ。

ガウディらしさが感じられるのは、せいぜいバルコニーのリサイクルのくず鉄を寄せ集めて作った手すりと部屋の入口のドアの鉄格子の覗き窓ぐらい。

ブルジョアが住んだ豪邸と言う割にはずいぶんと質素で、スペインのどこにでもある小金持ちの家と言う印象を受けるわね。

展示会場(エキシビション)*

ガウディとは全く関係のない展示がされていて、見る価値があるかどうかは展示内容によって変わるし、入るにはカサ・ミラの入場料以外に別途料金がかかるので注意が必要ね。

ギフトショップ・おみやげ

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アパートメントの見学できるフロアと、プレミアチケット入場口右の地上階の二つあり、地上階にあるショップは、入場チケットがなくても入場できるわ。

カサ・ミラのショップで販売されているグッズの数々

  • カラフルなトレンカディス模様のステーショナリー、マグカップ、コースター
  • ガウディのカレンダー、ペンケース、鉛筆、消しゴム
  • カサ・ミラの置物、ポストカード
  • 屋上テラスの通風孔や地上階の鉄の扉デザインの置物、水筒
  • カサ・ミラのTシャツ

ガウディ関連のおみやげなら、他の観光スポットやデパートなのでも買えるので、ここではカサ・ミラに関係したものを選ぶのがおすすめ。

カフェテリアレストラン

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カサミラの地上階のプレミアチケット入場口の左にはカフェテリアレストランがあるので、世界遺産の中でゆっくりお茶なんていいんじゃない?

中へ入って階段を上がって上を見上げると、波打つデザインの天井。

値段もそれほど高くなく、スタバーックスと同じぐらいだし、この辺りのどのカフェより静かで落ち着いているので、地元のマダム達がよく利用しているわね。

…まとめ

圧倒的な存在感を放つガウディの代表作の一つだけど、残念なのはガウディがミラ夫婦との間のトラブルにより、途中で建築から手を引いたことに尽きるわ。

タラレバになるけど、もしガウディが最後まで建築に関わっていれば、賃貸住宅部分もガウディらしさが遺憾なく発揮されていたに違いないと思うと残念でならないわね。

ガウディ建築に少しでも興味を持ってもらえるよう、この解説が少しでも読者さんの旅行計画に少しでもお役に立てればうれしいわ。

最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。

参考➡カサ・ミラの公式サイト