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【2021年版】【徹底解説】ガウディだけじゃない世界遺産、サン・パウ病院

San Pau Hospital

こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。

Aさん
Aさん
「バルセロナのサグラダ・ファミリアの近くにガウディ以外の世界遺産があるって聞いたんだけど、どこのことかしら?」

モニカ
モニカ
「カタルーニャ音楽堂の建築家リュイス・ドメネク・イ・モンタネールが設計したモデルにズモ建築の巨大総合病院サン・パウ病院のことね。」

ということで、今回はもう一つの世界遺産サン・パウ病院を詳しく解説していきますね。

サン・パウ病院とは?

San Pau Hospital
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建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール設計の総合病院で、正式名称はサンタ・クレウ・イ・サン・パウ病院。

1900年代初頭、総合病院と呼べるような大きな病院のなかったバルセロナ市内に、当時の6つの病院を合併して建設されたモダニズム建築の巨大総合病院。

1800年代後半、バルセロナは人口増加にともない庶民の衛生状態が悪化していたため、病院の建設が急務だったわけ。

パリで銀行家として成功したバルセロナ出身のパウ・ギル氏が1896年に亡くなるとき、故郷に貧しい人を救うための病院を彼の遺産で建てるよう遺言を残したのね。

そこで、設計を担当したのが、ガウディと並びモデルニスモ建築を代表する建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール。

建設は1902年に着工されたけど、ムンタネール氏の生前中に病院の完成には至らず、意志を受け継いだ息子のロウラによって、着工から28年後の1930年にサン・パウ病院が完成。

1997年、同じモンタネール設計のカタルーニャ音楽堂と共にユネスコの世界遺産に登録されることに。

資金難とモデルニズモ建築の病院

San Pau Hospital

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一辺が400mx400mという広大な敷地に建ち並ぶレンガ造りのモデルニズモ建築群は、病院とは思えないほど華麗で創造的。

バルセロナ新市街の碁盤の目になったエインシャンプラ地区に対して、病棟の入り口を南北にするために、斜め45度方角を変えて設計されているの。

その理由は、ムンタネールは新鮮な空気と日光こそが患者にとって一番重要と考え、建物内を海からの風で換気をはかり、太陽の光を十分取り入れるためだったから。

当初は、病棟やサービス棟が全部で48棟を敷地内に配置し、全てを地下通路で繋げる計画だったんだけど、資金面の問題から1930年、最終的には28棟の病院として完成。

病棟内は富豪の邸宅を思わせるほど豪華で、モデルニスモ建築の特徴である色鮮やかなモザイク装飾や、ステンドグラスを多用。

バルセロナの街が山から海に向かってなだらかに傾斜しているため、景観を考慮して、病棟は奥に行くほど高くなるように建てられているわ。

また、この病院の特徴の一つが、右側が男性病棟、左側が女性病棟と男女の病棟が明確に分かれていること。

男性病棟には男性聖人の名前が付けられ、女性病棟には女性聖人の名前が付けられているの。

その後、2009年まで80年に渡り、実際の病院として使用されていたけど、老朽化のため新病院が建設され、全患者と医療設備が完全に移設されることに。

病院としての役目を終えた建物は、その後、修復がおこなわれ、2014年から現在のように一般見学ができるようになったのよ。

開館時間・休館日

開場時間

・ 11月〜3月:
火曜-金曜       :10:00–14:00
土−日曜・祝日 :10:00–17:00
※最終入場時刻 閉館30分前

・ 4月〜10月:
月曜-土曜    : 9:30–19:00 (未定)
日曜・祝日  : 9:30–15:00 (未定)
※最終入場時刻 閉館30分前

休館日
・ 1/1、6、12/25、26

営業時間の変更などもありますので、公式サイトの営業時間もチェックしてください。
営業時間(サン・パウ病院公式サイト)

見学方法・混雑具合

ガウディ設計のサグラダ・ファミリアや同じモンテネールが設計したカタルーニャ音楽堂と比べれば、空いているわ。

一年を通して長い行列を作るようなこともないので、ネットでの事前予約の必要はなく、チケットは当日現地購入で大丈夫よ。

また、病院内は自由に写真を撮影をすることが可能よ。

見学時間の目安

サン・パウ病院の見学には45分〜60分もあれば十分よ。

見学ポイントは意外に多いんだけど、建物中央の庭園を中心に狭い範囲に集中していて、誰でもスムーズに回る事ができるわね。

見学時間が30分以下だとかなり駆け足になってしまうけど、ポイントだけ見て回るなら大丈夫。

ただし、サン・パウ病院の最大の見どころ「管理事務分館」だけには絶対に立ち寄ることをおすすめするわ。

見学テクニック

サン・パウ病院は、自分で自由に見学するセルフガイドツアーと、ガイドから説明を受けるガイド付きツアーの二つの方法があるの。

残念ながら日本語でのガイド付ツアーはないけど、セフルガイドツアーなら、追加料金(4€)で日本語対応のオーディオガイドで建物を見学できるわ。

チケット料金
・セルフガイドツアー(Self-guided visit):15€

・オーディオガイド(Audio Guide):4€

入場無料日:
・毎月第一日曜日、4月23日、9月24日

※Covid-19の影響で、現在ガイド付きツアーは催行されていません。

見どころ・見学コース

San Pau Hospital
現在、建物内を見学できるのはモンタネール自身が建設を担当したエリアのみ。

見学は、館内で無料配布されているパンフレットのマップの順路に沿って、時計と反対回りに見学するのが最も効率の良い方法。

正面入口に建っている管理事務局分館がハイライトで、マップの番号の順番に見て行くと、ちょうど最後の見学スポットになるわね。

1.多柱式ホール
2.聖サルバドール(聖救世主)分館
3.中庭・庭園
4.手術室(手術棟)
5.聖ラファエル分館
6.トンネル
7.プリシマ(聖マリアの「無原罪懐胎」)分室
8.管理事務分館
9.その他の分館と建物

建物が10個ほどあるけど、館内を見学できるのはマップで水色に塗られている部分だけ。

現在も修復工事が行われているので、見学できる建物が今後も増えていくと思うわ。

それでは、病院敷地内の建物を一つずつ紹介していきますね。

多柱式ホール

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まず最初に向かう見学スポットが、管理事務分館という建物の地下に位置する多柱式ホール。

ここは病院として機能していた頃は、救急サービスの場所として利用されていたのよ。

聖サルバドール(聖救世主)分館

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正面右手、一番手前に見える聖サルバドール(聖救世主)分館は、病院が完成する前の1916年から患者を収容していた分館。

建物の棟はそれぞれ装飾が異なり、建築様式にはムデハル様式というイスラム美術とゴシック美術を併せ持つスペイン特有の建築様式が採用されているの。

一階には当時の医療に関するものやサン・パウ病院の模型の展示があり、二階にはアートが展示されているわ。

病院とは思えないターコイズブルーの美しいタイルで装飾された波打つ天井。

ピンクの鮮やかな色の壁面のタイルも、きっと多くの患者の気持ちを癒やしたに違いないわね。

庭園

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分館に囲まれ敷地内の中央に位置し、見学可能な芸術的な装飾の施された複数の棟の起点となる庭園は、写真撮影にはもってこいの絶景スポット。

庭園の木々や植物も病院には不可欠な存在で、草木が空気の浄化や湿度調整の役割を果たしていたの。

また巨大な建物が患者に与える威圧感を避けるためと、新鮮な空気や日光を効率的に館内に取り込むために、あえて複数の棟に分散させて建設しているの。

芸術性だけでなく患者のことを第一に考えて建設されているということね。

手術室(手術棟)

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中庭の正面に建つのが棟の最上部に両手を天に突き出すようなポーズを取った天使像の飾られた壁面に青と白の美しい陶器のタイル装飾が施された手術棟

手術棟裏側中心にあるガラス張りのホールは、かつて手術室として使用されていた場所。

内部はモダンに改装されいて特に見るものはないけど、正面ファサードの彫刻や青を基調とした美しいタイルはそれなりに見応えがあるわ。

聖ラファエル分館

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聖ラファエル分館は、かつて看護分館だった建物。

館内は聖サルバドール分館の二階と似たようなタイル装飾がなされていて、こちらは緑を基調としているわ。

館内は1920年当時のそれぞれの分館や入院設備がどの様になっていたかが再現されていて、当時の様子がわかる写真付きパネルや病棟の模型が展示されているの。

20世紀初期に使われていた医療機器、古いレントゲンの展示や、当時の医療などについての説明がされているわ。

また、起床可能な患者が休憩や面会するときのデイホールと呼ばれる円形ホールも見学可能よ。

トンネル

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複数の練が地上の敷地内で連なっているけど、驚くことに全ての棟がトンネルで地下でも繋がっていること。

当時は多柱式ホール(救急サービス)に運ばれた患者さんや医師が、このトンネルを通っていろんな病棟を行き来していたんだと容易に想像できるわね。

天井には明かり取りの窓があったりと、使う人のことを一番に考えて作っている点はガウディと共通するところ。

ただし、現在観光で見学できるトンネルの範囲は見学順路に沿った一部のみよ。

トンネルの壁面には医師や赤ちゃんなどの映像が投写されていて、ちょっとホラーチックなきがしないでもないわ。

プリシマ(聖マリアの「無原罪懐胎」)分館

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正面左手、一番手前に見える病棟プリシマ分館は、設計者のムンタネールが手掛けた当時のままの状態で残る数少ない建物。

女性用の病棟で唯一公開されている分館で、壁なども修復されていない状態で、ただ何もない空間が広がっているの。

1920年当時は、このスペースの両側にはベッドが並んでいて、その様子は部屋の奥の写真パネルで確認する事ができるわ。

管理事務分館

サン・パウ病院最大の見どころが管理事務分館

館内の装飾の美しさはガウディの作品群などと比較しても全く引けを取らないほど。

ロビー

San Pau Hospital

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建物に入ってすぐ目に飛び込んでくるのが、美しいピンク色のアーチ天井が並ぶロビーの景観。

色彩の柔らかさで患者に癒やしを与え、リラックスさせたいという願いから、ステンドグラスやタイル、モザイク装飾には、ピンクや黄色のパステルカラーが多用されているわ。

そこには、単なる建築美の追究だけでなく、少しでも患者の苦痛を取り除きたいという設計者ムンタネールの強い想いが込められているのよ。

天井にはギリシア文字のアルファベットでΑ(アルファ)19051910Ω(オメガ)と書かれていて、これは病院の建設が1905年に始まり、1910年に終わったことを表しているの。

栄誉の階段

San Pau Hospital

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建物の右側に見えるのが、物乞いにマントを割いて与える聖人マルティヌスのレリーフが刻まれた栄誉の階段(Escala d’honor)。

見えにくい階段の桁の部分もしっかり装飾が施されていて、天井を見上げると美しい明り取りのステンドグラスも観ることができるわ。

メイン階段から二階に上がると、建物の至るところに、天使や花などをあしらった彫刻や装飾がほどこされているのが見て取れるわよ。

メイン階段の天井にはステンドグラスがあり、ステンドグラスの中や回りの装飾に注目すると、ハート型が多用されているのが分かるわね。

大階段を上がって縦長の回廊に出ると、ガラス窓越しにガウディ通りとサグラダファミリア側の景観を望むことのできる写真撮影スポットがあるので忘れないように。

ドメネク・イ・ムンタネール・ホール

San Pau Hospital

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大階段を上がって左手に進むと見えるのが、管理事務分館で最も美しいドメネク・イ・ムンタネール・ホール

タイルで装飾された柱の間のステンドグラスの窓を通して見えるのは庭園のある中庭。

また、逆側の窓から見えるのは絶景のサグラダ・ファミリア。

もともと礼拝堂として利用されていた場所で、絵画やタイル装飾、モザイク画が美しく彩られていて、ホールの至るところに、花柄をモチーフにした陶器のタイルや装飾がされているの。

頭上のステンドグラスはシンプルだけど、まわりの装飾や光と見事に調和して、どことなく神秘的な雰囲気を醸し出しているわ。

講堂

San Pau Hospital

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栄誉の階段を降りて一階に戻ると、階段の左側に見えるのが美しい天井を持つ回廊。

回廊の一番奥にはムデハル様式の独特の天井装飾で飾られた吹き抜けホールがあるわ。

管理事務分館の見学を終えたら中庭に戻り、入口と同じ管理事務分館の右側の出口へ

その他の分館と建物

San Pau Hospitalその他の分館は一見同じに見えるけど、全て微妙に装飾やデザインが異なっているの。

各分館の違いは非常に見分けにくいと思うけど、ドーム部分や塔の装飾の違いで見分けることができるわ。

ギフトショップ・おみやげ

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出口の先にショップがあり、モザイクのしおり、マグネット、コースターなどサン・パウ病院のオリジナルグッズが販売されているわ。

…まとめ

サンパウ病院はガウディ建築の陰に隠れてしまって、日本人観光客には今ひとつ認知度がないようだけど、非常に美しい装飾が見事なモデルニズモ建築の世界遺産。

ハイシーズンでもそれほど混んでいることもなく、サグラダファミリアからも徒歩数分圏内なので、サグラダファミリア観光後にでも、ぜひ足を運んでみてはどうかしら。

ガウディ建築とはひと味違った装飾が楽しめ、そういった意味ではカサ・ミラやカサ・バトリョなどよりもかなりおすすめの観光スポットよ。

最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。

参考➡サン・パウ病院の公式サイト

Palau de la Musica
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