こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。
ということで、シリーズ第六回目の今回は「アントニオ・ガウディの作品群」のカサ・ビセンスを詳しく解説していきますね。
最新情報!
建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí)が初めて設計した【カサ・ビセンス】に宿泊!
スペイン、バルセロナにある1885年に建てられた邸宅に、エアビーアンドビー(Airbnb、以下エアビー)を通じて、1泊1ドルで宿泊できるかもしれないわ。
- アントニ・ガウディによる19世紀の傑作建築が、2021年の秋に1泊のみ宿泊を受け入れる。
- エアビーアンドビーを通じて、バルセロナにあるすばらしい邸宅「カサ・ビセンス」に、1泊たった1ドルで宿泊できる。
- 予約の受付開始は日本時間2021年7月12日23時からで、宿泊にはミシュランの星付きレストランによるディナーと翌朝のブレックファースト付き
エアビーの情報では、宿泊者が使用できるのはベッドルーム、ハーフ・バスルームと暖炉と4人掛けのテーブルを備えるダイニングルーム。
このダイニングルームでガウディに因んだミシュランの星付きの食事が提供されるの。
宿泊した翌朝は、庭で地中海料理のブレックファーストを食べることができるわ。
予約の受け付けは、日本時間の2021年7月12日午後23時に開始するとのこと。
カサ・ビセンスとは

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バルセロナの細い路地が続く庶民的なグラシア地区というエリアにひっそりと佇むカサ・ビセンス。
ガウディ初期の作品としても知られるカサ・ビセンスは、当時まだ建築資格を取って5年目、31歳だったガウディが初めて設計・建築を手掛けた個人宅のプロジェクト。
マヌエル・ビセンス・ムンタネールというタイル製造業者社長の依頼により、家族の別荘として建設された、他のガウディ作品とはイメージが大きく異る直線的なデザインを多用した建物。
建物にはムディハル様式という、イスラム教建築とキリスト教建築を融合した幾何学模様を多用したスペイン特有の建築様式が採用されているの。
依頼から二年後の1880年に設計を仕上げるも、施主ビセンス氏の金銭的事情により工事着工が遅れ、建物が完成したのはちょうどゴシック地区のグエル邸と同じ1888年のこと。
1925年には建物の拡張計画が始まり、その後建物の所有者が変わったり、長年個人の住居として使用され、これまで一般開放されておらず訪れる人もほとんどなく、観光客からも半分忘れられていたカサ・ビセンス。
2005年に世界遺産として登録され、2014年、アンドラ公国の銀行MORABANK(モラバンク)が所有し、3年の改修工事を経て、2017年11月、遂に一般見学ができるようになったの。
他のガウディ作品とは異なるデザイン

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ガウディの他の作品を既に見た人にとっては、違和感を感じずにはいられないデザイン。
一つは、カサ・バトリョやカサ・ミラで見られるような徹底的に直線を排したデザイン対して、ここでは徹底して直線を基調とした外観。
「自然界には直線は存在しない」というガウディの言葉と矛盾するのも、カサ・ビセンスの建設のあとに、ガウディが進化し求めていた心理にたどり着いたと考えれば、納得のいく話。
もう一つは、ムディハル様式を模したと言われる部分は、当時の建築家たちがよく使っていたありきたりの手法で、何ら特筆するものではなかったの。
これまた「自然が作りあげたものこそ美しく、私たちはそこから発見するだけ」と言うガウディの言葉と矛盾するのも、後年ガウディが大きく花開く前の成長過程の初期にあったからと考えれば、こちらも納得。
さらに、もう一つの大きな違いは、壁に張り付けられているタイルが、ガウディの定番と言えるトレンカディス(破砕タイル)ではなく、同じ大きさ、同じ柄のタイルだということ。
むしろ、濃い朱色のように塗られたレンガの部分が少し雑にも見え、私達がよく知るウディらしさがあまり感じられないのは、ガウディの最初の作品ということを考えれば、当然のことかも知れないわね。
そんな中、カサ・ビセンスでガウディらしさを探すなら、グエル公園の正門にも同様に見られるシュロの葉の鋳鉄の門くらいのものかしら。。
営業時間・休館日・その他
営業時間
【10月1日〜3月31日】 (金曜) ・15:00 – 19:00
. (土〜日曜) ・10:00 – 19:00
【4月1日〜9月30日】 (※未確定)
※ 最終入場は営業時間の1時間20分前までになります。
休館日 1月6日、12月25日
混雑具合・行列回避方法
2017年に一般見学が可能となったこともあり、まだまだ観光客には知られていない様子。
サグラダ・ファミリアやカサ・ミラ、カサ・バトリョなどの人気観光スポットに比べたら、いつも空いているわ。
特に夏のハイシーズンでなければ、特に事前にネット予約しなくても、当日、チケットオフィスで購入しても全然問題なしよ。
むしろ、事前のネット予約だと、日にちだけでなく時間も指定する必要があるので、かえって旅行スケジュールに縛られることにもなりかねないわ。
ただし、サグラダファミリアの完成が近づくに連れて、ガウディの初期作品として注目度が高まることは間違いないので、今後混雑が予想される観光スポットになるかも知れないわね。
見学時間の目安
見学時間は、公式サイトにもあるように60分〜80分ほど。
カサ・ビセンスは、地下1階と地上0階〜3階建てになっていて、日本でいうところの、地下1階〜4階の5フロアになっているの。
0階から3階までの4フロアに全部で16ヵ所の見学ポイントがあり、見どころをひと通りじっくりと見学して最後に地下階のギフトショップに立ち寄るなると、最低でも1時間ぐらいは見ておいたほうが良さそう。
ただし、30分〜40分でも駆け足で一通りの見学は出来なくはないので、ご自身の予定に合わせて見学してくださいね。
見学のテクニック
一般公開が始まった頃は、カサ・バトリョや、カサ・ミラ、グエル邸のようなオーディオガイドのサービスはなかったんだけど、今は日本語のオーディオガイドが整い、入場チケットに含まれているの。
チケットオフィスで建物のフロアマップをもらって、オーディオガイドにしたがって、館内を自由に見学すれば大丈夫よ。
見どころ・見学コース
ギフトショップと出口のある地下階をを入れると全部で5フロアになっているの。
見学コースとしては、庭園からスタートして、地上階にあたる0階、1階、2階(屋根裏部屋)、3階(屋上)の順に見ていくのがいいわね。
庭園

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1988年の完成当初と比べて最も大きく代わった場所の一つがこの緑豊かな庭園。
かつては、円形の噴水ややぐらなどもあったそうだけど、住宅が売却されたときに取り壊され、その後の2014年からの改修工事によって、当時の景観は可能な限り再現されたとのこと。
エキゾチックでオリエンタルな雰囲気が満載の庭園の一角にはクロワッサンで有名なHofmannのカフェもあり、見学後ここで休憩するのもいいわね。
バルセロナ「Hofmann(ホフマン)」の売り切れ御免の絶品マスカルポーネ入りクロワッサン – モニカ通信

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庭園をさらに奥に進んで行くと、かつては玄関の窓であったところが、1925年の拡張工事に伴い、玄関のドアに改修された入口があるわ。
建物の南側に設置されている入口右手の鉄格子はシュロの葉の門と名付けられており、唯一ここだけが誰もがよく知るガウディらしいデザインと言えるかも知れないわね。
0階

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館内に入り、エントランスホールを通って奥に進み、ダイニングルームへ
部屋の中央には暖炉が置かれ、家具は全て取り外しができない作り付けになっていて、天井の細かな装飾は、ガウディの建築学校時代の先生、ドミニク・モンタネールのカタルーニャ音楽堂を彷彿させるわね。

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ダイニングルームを通って奥に進み、色彩タイルの装飾が見事な喫煙ルームへ
昔は今と違い、男性と女性とが同じ家の中でも別々の生活空間を持っていて、その代表が、この喫煙ルームとよばれる空間。
天井はカサビ・センスの中での一番の見どころとも言える、緻密なイスラム建築の影響を強く感じさせる青を基調とした細かな装飾の造り。
建設前の敷地内にマリーゴールドの花が咲き乱れていたため、オリジナルに忠実に復元された部屋の青と黄色の一松模様タイルには、マリーゴールドがあしらわれているの。
また、壁面の一部には、18世紀頃からヨーロッパを中心に使用されていた建築素材パピエマシェが使用されているの。

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直線的なデザインの階段を登り1階(日本の2階)へ
1階

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最も広いスペースを占有するのが、壁面上部は植物模様があしらわれ、床の壁面はローマンモザイクで覆われた、同フロア中央に位置する寝室。
寝室の奥の扉はテラスへと通じていて、テラス外側の壁面に沿って、金網の柵と一体になった木製のベンチが配置されているわ。

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寝室の隣りは丸天井の部屋と呼ばれる部屋があり、大きな立体的に見える天井画はトロンプ・ルイユと呼ばれるだまし絵の手法で描かれているの。
丸天井の部屋の隣りには、木蔦(きづた)がモチーフになっている見事な青い部屋。
グエル邸にもあったように、ここでも夫婦の寝室は別々になっているのよ。
夫婦仲が悪く別室になっていると言う訳でなく、当時は夫婦の寝室がそれぞれ別なのが当たり前の時代だったからなの。
ビセンス家には子供がおらず、夫婦と養子のわずか3人家族と言うこともあり、グエル邸に比べても、建物の内部はそれほど大きくなく、また部屋数も少ない造りとなっているわ。
2階(屋根裏部屋)

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もともと使用人のための部屋があった屋根裏部屋は、現在オープンスペースとして常設展示フロアになっていて、ガウディ自筆の手紙や建物の図面をみることができるわ。
展示内では、カサ・ビセンスで行われた改築工事や建築の歴史はもちろん、装飾に用いられている技法や素材についても知ることができるの。
ただし、ここで展示されてものは全てコピーで、オリジナルは別の場所で保管されているとのこと。
カサ・ビセンスの模型も展示されていて、建設当時の模型からは今は無い門などがあり、現在の倍以上の広さだったことが分かるわ。
3階(屋上)

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屋根裏部屋の階段を登り切った上にある屋上は展望フロアとなっているの。
カサ・ミラの屋上のように一周できる訳ではなく、通路として歩けるのは、建物の東側の一角のみ。
カサ・ミラのあの煙突郡には程遠く、またグエル邸にも及ばない、別段見応えあるものでもなく、非常にシンプルなもの。
通路内側の壁は暖かみのある赤色で、外側の黄色と緑のタイルの装飾を際立たせているわ。
屋上通路の角や屋根付近に建つドーム付きの塔は、ネオムディハル様式の影響が強く見られるけど、ガウディらしさがあまり感じられないわね。
壁越しに景色を見渡す事もできるけれど、まわりは建設当時は無かった高いビルに囲まれていて、絶景という訳にはいかないわね。
外観(ファサード)

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前述したとおり、ガウディ作品の代名詞でもある曲線的なデザインはカサ・ビセンスには見られず、全体的に直線的なデザインとなっているのが特徴的ね。
むしろ、カサ・ビセンスの一番の魅力は外観に施された美しい装飾の数々じゃないかしら。
植物や動物のモチーフを装飾に多用し、施主のビセンス氏がタイル業者であったこともあり、装飾には色彩タイルをふんだんに使っているの。
建築素材には、石材、レンガ、セラミック、錬鉄、木材などが使われていて、素材本来の質感が最大限に活かされているわ。
建物自体の構造は非常にシンプルだけど、そこに鮮やかな装飾をすることで「カサ・ビセンス」ならではの個性が見て取れるわね。
ギフトショップ・おみやげ

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雑貨屋さんのようなカサ・ビセンスのショップで販売されているグッズの数々
カサ・ビセンスのタイル柄のコースター、花瓶のカバー、電気スタンドカバー
カサ・ビセンスのイラストが書かれた商品と
カサ・ビセンスの植物模様があしらわれた扇子
種類豊富な、ばらまき用みやげの定番、マグネット
カサ・ビセンスというよりは「ガウディ」に関する書籍がほとんどの解説本
カサ・ビセンスとは関連性がほとんどない個性的でお洒落な花瓶
…まとめ
カサ・ビセンスは2017年に一般見学が可能になったばかりの見学スポット。
サグラダ・ファミリアを初めとする一般によく知られているガウディ建築とは大きく異なるわね。
ガウディ建築の集大成として、あのサグラダ・ファミリアへ大きく進化していく中で、最初に手がけられたガウディの原点となるのがこのカサ・ビセンスといえるんじゃないかしら。
既に他のガウディ作品を全て見たと言う人で、ガウディが好きな人にはおすすめできるわ。
最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。
参考➡カサ・ビセンス公式サイト
