こんにちは、バルセロナ在住10年目になるモニカ通信のモニカです。
ということで、シリーズ第三回目の今回は「アントニオ・ガウディの作品群」のカサ・バトリョを詳しく解説していきますね。
※現在カサ・バトリョは当面の間、閉館となり再オープンの日時は今のところ決まっていません。最新情報が分かり次第、情報を更新していきますね。
カサ・バトリョとは?
カサ・バトリョ(Casa Batlló)は、ガウディの曲線が特長のモデルニスモ建築建築物の代表作の一つで、2005年世界遺産に登録された「アントニ・ガウディの作品群」の一つ。
繊維業で財をなした富豪ジュゼップ・バトリョの依頼で、ガウディが1904年~1906年にかけて5階建ての建物の地下1階と地上6階、そして屋根裏を増改築した集合住宅(アパート)。
この個人所有の邸宅は、ユニークな外観から別名「骸骨の家」「あくびの家」とも呼ばれ、長い間未公開で、一般に公開されたのは改装から約100年後の2002年のこと。
現在の建物の所有者はバルセロナ発祥のキャンディ、チュパチャプス社となっているわ。
諸説ある屋根のデザイン

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カサ・バトリョの屋根のデザインに関しては諸説あるの。
① カタルーニャの聖人サンジョルディの伝説にちなんで、ドラゴンに見立てている説。
石柱が骨、バルコニーが骸骨に見えるので「骨の家」「骸骨の家」とも呼ばれ、ドラゴンの犠牲になった人たちの骨を表しているとも。
② 屋根をアルルカン(道化師)の帽子に見たて、バルコニーは仮面、建築家ジュゼップ・マリア・ジュジョールによる様々な色の破砕タイルが、カーニバルの紙吹雪を表しているとする説。
③ 建物の外壁を含めて、全体が海をイメージしている説。
一般的には①の説が有力のようだけど、ガウディ自信その記録を残しているわけではないので、本当はもっと他のものをモデル・イメージしていたかも知れないし、真相は闇の中。
営業時間・休館日
※現在カサ・バトリョは休業中で、再オープンの日時は今のところ決まっていません。最新情報が分かり次第、情報を更新していきますね。
■営業時間
・通常営業:9:00 – 20:00 ※最終入場19:00
・早朝入場:8:30
・夜間入場:20:30~22:30
※季節により変わる可能性があります
■休館日:なし
混雑具合・行列の回避方法

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人気の観光スポットでもあり大変混雑するけど、入場チケットは時間指定制なので、長時間待つことはないわね。
ただし、チケットの種類によっては、30分程度待つことは少なくないわ。
三種類のグレードのチケットがあり、一番値段の高いゴールドチケットなら、列に並ばずに待ち時間なしで優先入場できるわ。
特に夏期などは大変混雑する上、炎天下で待つことになるので、ネットで事前にゴールドチケットの予約をおすすめするわ。
見学時間の目安
見学時間は、公式ページにも記載されている通り約1時間程。
ただし、優先入場できるゴールド・チケット以外の場合、館内に入場するまでに30分くらいかかることもあるわ。
また、混雑しているときは、写真を撮るのに順番を待ったりするので、余裕を見て1時間半を見ておけば大丈夫ね。
見学のテクニック

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チケットには、スマートガイド(オーディオガイド)のサービスが付いていて、専用のスマホを利用したオーディオ+ビジュアルのハイブリッド。
館内には、オーディオガイドの番号が見学ルートにしたがって表示されているので、番号にしたがって進めば、見どころを逃すことなく館内を組まなく見学できるようになっているわ。
見どころ・見学コース
では、カサ・バトリョの見どころをいくつかピックアップしてご紹介しますね。
玄関ホールと中央階段

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玄関ホールに入ると、右手に階段、左手にもう一つの入り口が見えるわ。
右手の階段は上階に住む借家人(店子)の入り口で、左手の入り口はバトリョ家専用の入口とそれぞれが独立しているの。
バトリョ家の入り口を中へ進むと、木製の階段の手すりの下に通称ドラゴンの背骨と呼ばれる波打つ板があり、これは手すりの間から幼児が落下するのを防止するためのものなの。
螺旋階段を上がると頭上に見えるのが、日中、建物中央吹き抜けのパティオに降り注ぐ太陽の光を取り込むようにした亀の甲羅をイメージした天窓。
階段を上がって最初に目にするのが、キノコ型をした「暖炉の部屋」と呼ばれるオーナーのバトリョ氏の執務室として使われていた部屋。
ところでこの部屋の両脇の耐久性に優れたトネリコの木のベンチは、片側が2人掛けで、反対側が1人掛けと変則的になっているの。
これは、ここで暖を取るだけでなく、談話室の役目も果たしていて、男女が二人掛けに座る際、暖炉を挟んで向かいのベンチにお目付け役の女中が座るための一人掛けベンチ。
中央サロン(ノーブル・ホール)

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ノーブル・ホールと呼ばれる中央サロンの美しいステンドグラスや曲線でできた柱や天井は、まるで海の神殿といった雰囲気で、ディズニーシーのマーメードラグーンを思い起こさせるわね。
中央サロンのグラシア通りに面した大きな窓の水玉模様の丸いステンドグラスを通して差し込む太陽の光は、まるで海面を反射するかのようにキラキラと輝いているわ。
サロンの左右にあるアコーディオン型の扉は、普段は独立した部屋(中央サロン、ダイニング、書斎)として使っているけど、必要に応じて全開し、一つの大きなスペースになるの。
外観から「あくびの家」と言われる部分に当たる大きな窓は、左右ではなく上下に開閉されるのよ。
大通り側にサロンを配置する理由は、道行く人をからの羨望の眼差しで見上げられていた場所であり、それを上から見渡すのが当時のブルジョア階級の特権意識の現れだったから。
ダイニング

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ダイニングルームは建物の一番奥の静かな場所に位置し、ここから廊下を介して使用人の部屋とつながり、使い勝手が良いように、二つの寝室がこの両脇に位置しているの。
可能な限り太陽の自然光を取り入れるために作られた大きな窓と、100年前にデザインされたと思えないパステルカラーのモザイクの二本で一対の柱が特徴。
グラナダのアルハンブラ宮殿にあるライオンの間から着想を得ているそう。
もう一つの特徴は天井に見えるミルクに一滴落としたときに水滴の跳ね返りできる王冠(ミルククラウン)。
テラス

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ダイニングルームを出たところのテラスは、控えめな壁面の装飾に対して建物の最上部のトレンカディス(破砕タイル)のデザインが、グエル公園の波打つベンチをイメージさせるわね。
このテラスはガウディの仕事上の右腕でもあるジュゼップ・マリア・ジュジョールが手掛けているの。
ガウディの細部へのこだわりが感じられる吹き抜けにつながる木でできた換気口も凝ったデザインね。
吹き抜け・階段

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建物内部の吹き抜け(中央パティオ)は、別名「光庭」とも呼ばれ、海底や海底洞窟をイメージして造られているの。
青いタイルで装飾された吹き抜けを見上げると、まるで海底から水面を眺めるような気分になるわね。
4つの壁面にはガウディ・ブルーと呼ばれる海底をイメージした青の市松模様のタイルとカメオ式の立体タイルが貼られているわ。
パティオ全体が同じ色に見えるように、強い光を受ける上階には光を吸収し易い濃い色調を、光が届き難い下階には反射率の高い白っぽい色調のタイルを、5段階に分け貼り合わせていること。
また、上階の部屋の温度が夏季に上がり過ぎる問題を解決すべく、明り採りの窓は上階ほど小さく、下階になるほど大きくすることで、部屋に射し込む日差しの均等化も行っているのよ。
この手法は、この後に建設されたカサ・ミラのパテイオに面した窓でも使われているのよ。
階段のガラスのパネルの表面に、凹凸のあるガラスを用いることで、その向こうの背景となるタイルの青が揺らぎ、まるで目の前にほんとうの海があるような錯覚を与えてくれるわ。
上下のサイズの違う窓には2つの機能を持たせ、上の大きい方が採光、下の小さな方が換気用となっていて、光以外にも換気と熱の循環まで綿密に計算し尽くされているの。
屋根裏(The Attic)

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ガウディのリフォームにより新しく付け加えられた屋根裏部屋。
本来暗い印象の屋根裏部屋を地中海の建築物のように明るい白い壁にし、美しい曲線をした内壁はドラゴンの胸の骨格をイメージしているのね。
屋根裏の役目は、使用人のためのスペースとしてだけでなく、夏の暑さや冬の寒さなどの外気温の変化から建物を保護する温度調整室としてでもあるの。
屋根裏部屋は柱を使わず、ラジョーラ(Rajola)と呼ばれる地元カタルーニャ産の薄レンガを使い、屋根裏構造(カテナリーアーチ)を用いているわ。
カサミラでも同様のロープや鎖などの両端を持って垂らしたときにできるカテナリー曲線の手法が使われているのよ。
ガウディはこのカサ・バトリョの他に、既に述べたカサ・ミラの屋根裏、更にサグラダファミリアにもカテナリーアーチの構造を使用しているわ。
というのも、この手法は安定した構造に加え視覚的にも美しく、レンガ積みの構造は制作しやすく、経済的な方法でもあったからなの。
屋上

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建物正面の屋根の作りは非常によく考えられた作りになっているわ。
グラシア通りから見える部分の表のタイルは大きく、ドラゴンの背中の鱗をイメージしたもので、反対側のタイルはオレンジ色の細かいモザイクのピースを使うことで、ドラゴンのお腹をイメージしたもの。
煙突も破砕タイルで装飾されています。デザインと機能性を両立させるガウディの真骨頂が見て取れます。
デザインと機能性を両立させるガウディの真骨頂が見て取れる煙突。
4つのグループに束にまとめられた揺れる様に曲がった27本の煙突は波、表面に貼られたトレンカディス(破砕タイル)は群生するキノコを表しているとも。
外観(ファサード)

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ノーブル・ホールの中央サロンの外観は、大きく開けた口のように見えることから「あくびの家」とも呼ばれているわ。
骨をイメージさせる砂岩でできた6本の支柱は、館内から見ると実際は花飾りになっているの。
人間の骸骨をイメージさせるバルコニーの底の部分は、植物のデザインになっているわ。
日没後、暗くなってから深夜1時までライトアップされ、昼間よりステンドグラスがよりはっきりと見えるね。
また、4月23日のサンジョルディの日やクリスマス期間などの日は、特別な装飾がほどこされるのよ。
プライベート・ホール*
ショップを出た場所に、シルバーチケット、ゴールドチケット所持者だけが入場できるプライベート・ホールの入り口があるの。
中では、バトリョの書斎などが再現されています。
不協和音の一角

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グラシア通りのこの一角には、100mほどの距離にカサ・バトリョと競うように面白いデザインのモデルニスモ建築の邸宅が横一列に並んでいるの。
なかでも有名なのがカサ・バトリョの隣りにあるカサ・アマリェ−ル(Casa Amatller)とその先にあるカサ・リェオ・イ・モレラ(Casa Lleo i Morera)。
それぞれモデルニスモ建築の代表者であるジョセップ・プッチ・カダファルクとドメネク・イ・モンタネールが設計したものよ。
どちらの建物も一般公開されているので、モデルニズモ建築に興味がある人は是非訪れてみてね。
ショップ・おみやげ

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カサ・バトリョのショップで販売されているグッズの数々
破砕タイルが亀甲柄のマグカップ、タンブラー、マウスパッド、シャツ、扇子
カサ・バトリョの外観写真、ステンドグラスの栞(しおり)、絵葉書、カレンダー
ガウディの建築物がデザインされたマグカップ
カラフルなモザイク風ガラスのグラス
ノーブル・ホールのステンドグラス柄のグッズ
トレンカディスデザインのオリジナル・スマホケース
…まとめ
数あるガウディ建築物の中でも、完成度高い作品の一つに間違いないなく、バルセロナ観光必見の観光スポットであることに疑いの余地はないわ。
唯一のマイナスポイントは、建物の所有者が有名なキャンディ会社、チュパチャプス社という民間企業で、営利目的のため入場料が高いこと。
ただし、バルセロナの他の観光スポットもどんどん値上げ(大体3,000円)されているので、ある意味これが観光地の相場と納得せざるを得ないのかも知れないわね。
ガウディ建築に少しでも興味を持ってもらえるよう、この解説が少しでも読者さんの旅行計画の少しでもお役に立てればうれしいわ。
最後まで読んでいただいてどうもありがとうございます。
参考➡ カサ・バトリョ公式サイト
※カサバトリョをよりファンタジックに表現したビデオはこちら⬇